2024.12.03あらたか

【hanare宝塚】想いをかたちに

「まんまるな 雲がま夏の まん中に」

Iさまが、この夏にhanare宝塚(小規模多機能型居宅介護)のフロアで作られた句です。

若いころから俳句を嗜んでこられたIさまの句は、フロアに居ながらも、その心は大空の下にいるようにどこまでも伸びやかで自由です。そんなIさまは以前、「いつかは自分の作品を活字にできたらいいんだけどね」と想いをつぶやかれたことがありました。ご自身の生きてきた道を振り返り「やりたいことを言葉にしたら叶う」と笑顔でおっしゃるIさまですが、その夢はあくまで心の奥に秘められた「淡い想い」のようでした。

どうにかしてその「夢」を現実にできないか――。そう考えていた矢先のことです。
この秋、hanare宝塚としてハロウィーンの作品を出品した作品展をいっしょに見学したその帰りの車中で、Iさまが「自分も作品を出してみたい」とはっきりと言葉にされたのです。「ぜひやりましょう!」そう声をかけてからのひと月、Iさまは熱心に作品づくりに取り組まれました。お部屋で休む時間は短くなり、目には力が入ります。時にはどうしたらよりよい作品になるかいっしょに頭を悩ませました。その様子にご利用者のみなさまも興味をもたれ、声をかけてこられたり、作品を読んで感心したりと、会話もひろがってくるのでした。

オーストラリアや欧州を拠点にした青年期を詠んだ活字化された作品に添えられたのは、hanareで詠んだ秋の句。左手で書かれた味わいのあるその手書きの文字は、リハビリを重ねてきたIさまの努力の証です。丁寧に筆を動かし表現されたその句を、Iさまはひとつの作品として販売することにされました。「売れるかな」と少し緊張しながら迎えた当日、Iさまは来場されたお客さまと会話を楽しまれ、作品を気に入って購入してくださる方も現れました。

「本」という形ではありませんでしたが、「やりたい」という想いをもって取り組んだこのひと月は、わたしたちスタッフにとっても、「想いの力」を実感する貴重な時間となりました。作品展を終え、フロアでゆっくり過ごしていたIさまに感想を伺うと、「楽しかった」とほほ笑み、スタッフと堅い握手を交わしてくださいました。

クリスマスの飾りがhanareを彩るようになった今も、Iさまはフロアで筆をすすめています。
「天空に 揺れるオーロラ 天の息」

これからも Iさまの益々のご活躍を期待しています。